エンジェル投資家から出資を受ける前に、「うちの会社は対象になるのか」を都道府県に確かめておける。それがエンジェル税制の事前確認です。

この記事の要点

  • 事前確認は任意の制度です。申請日の時点で、会社が企業要件を満たしているかだけを都道府県が確認します。
  • 事前確認を受けても、出資の後にあらためて確認申請が必要です。投資家側の要件と払込みの事実は、そこで確認されます。
  • 事前確認書の有効期間は、多くの場合、申請日の属する事業年度の末日までです(措置の適用期限が先に来る場合はその日まで)。
  • 審査期間の目安は、正式な申請書類の受理から1か月程度です(東京都は受領後原則1か月以内で、短縮はできないとしています)。書類の準備や補正の期間は別にかかります。
  • 起業特例の要件で優遇措置Bを使う場合は、事前確認の制度がありません。

1. 結論:事前確認は「出資前の安心材料」で、確認申請の代わりにはならない

エンジェル税制は、要件を満たすスタートアップに出資した個人投資家が、所得税の優遇を受けられる制度です。投資家が優遇を受けるには、会社が本店所在地の都道府県から確認書の交付を受け、それを投資家に渡す必要があります。この確認には、出資の前に企業要件だけを確かめる「事前確認」と、出資(払込み)の後に行う「確認申請」の二段階があります(経済産業省「申請ガイドライン(エンジェル投資、令和8年1月1日以降出資用)」)。

事前確認を受けなくても、出資後の確認申請だけでエンジェル税制は使えます。事前確認は、出資の前に要件の不安を洗い出し、投資家に説明するための手段と考えるとわかりやすいでしょう。

2. 事前確認と確認申請(払込後)の違い

項目事前確認確認申請(払込後)
任意か任意投資家が優遇を受けるには必要
基準日申請日払込みの日など
確認する要件会社の企業要件のみ企業要件・投資家の要件・払込みの事実
申請先本店所在地の都道府県
交付される書類事前確認書確認書(投資家へ交付するもの)
確定申告に使えるか使えない使える(投資家の確定申告に添付)

東京都は、事前確認書は出資後の確認や税の優遇を保証するものではないと説明しています(東京都「よくある質問」)。出資の時点で要件を満たさなくなっていれば、事前確認を受けていても対象外になります。

3. 事前確認のメリットと注意点

メリット

会社名の公表

国の制度としては、事前確認をした会社名などを経済産業省のウェブサイトで公表するとしています(経済産業省「エンジェル投資に対する措置」)。一方、運用面では、東京都は交付時に公表を希望するかを確認し、神奈川県は企業が希望した場合に公表すると案内しています(東京都FAQ、神奈川県)。その他の都道府県の扱いは、申請先に確認してください。

株主構成の要件は、出資の前と後の両方で

事前確認を使う場合、株主構成の要件は、出資の前と後の両方で満たしている必要があります。出資の時点で要件を満たさなくなったときは対象外となり、事前確認書を返納します(東京都FAQ)。

4. 事前確認が有利になりやすいケース・不要なケース・制度上使えないケース

有利になりやすいケース

不要なケース

制度上使えないケース

有効期限が切れた後に出資を受けた場合 エンジェル税制が使えなくなるわけではありません。事前確認を使わず、払込後の確認申請に切り替えて手続きします(東京都FAQ)。

5. 申請の流れと、出資日から逆算したスケジュール

  1. 要件のチェック(会社の企業要件、想定する投資家)
  2. 事前確認の申請(本店所在地の都道府県)
  3. 事前確認書の交付
  4. 投資契約の締結・払込み
  5. 払込後の確認申請
  6. 確認書を投資家へ交付
  7. 投資家が確定申告

逆算の考え方(日付は仮の例です)

審査期間の目安は、東京都が「受領後原則1か月以内」、大阪府と神奈川県が「受理後1か月程度・約1か月」としています(東京都、大阪府、神奈川県)。この期間は正式な受理の後から数えるため、書類の準備や補正の期間を別に見込みます。その他の都道府県の目安は、申請先で確認してください。

時期(仮の例・3月決算の会社)やること
6月要件のチェック、事前確認の書類準備
7月上旬事前確認の申請。受理後、審査期間の目安は1か月程度
8月事前確認書の交付(有効期間は、多くの場合、翌年3月末の事業年度末まで)
9月投資契約・払込み
10月〜払込後の確認申請 → 確認書を投資家へ
翌年2〜3月投資家が確定申告

確定申告の直前は申請が混み合い、東京都は審査期間を短くすることはできないとしています(東京都FAQ)。年末に近い払込みほど余裕がなくなるため、払込日から逆算して早めに準備してください。

エンジェル税制 制度マップ(令和7年度改正対応・A4×2枚)

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6. 必要書類の概要

事前確認の申請書の様式と添付書類は、申請ガイドラインと様式集で定められています。登記事項証明書や株主名簿、決算書類などが中心ですが、細かな扱いは都道府県によって違うことがあるため、申請先の案内もあわせて確認してください。企業要件そのものの解説は、エンジェル税制の解説「企業の5つの要件」と「申請から確定申告までの流れ」にまとめています。

7. よくある失敗

  1. 出資が複数回あるのに、手続きを1回で済ませようとする:払込後の確認申請は基準日ごとに行います(東京都FAQ)。
  2. 出資後の確認申請の準備が遅れる:個人投資家が複数いる場合、確認申請書は投資家ごとに作成します(東京都FAQ)。投資家が多いほど、書類の取りまとめに時間がかかります。
  3. 事業年度をまたいでしまう:事前確認書の有効期間は、多くの場合、事業年度の末日までです。また、申請時点で事業年度をまたいで決算が終わっていない場合、東京都では決算・法人の確定申告を終えてから申請するとしています(東京都FAQ)。
  4. J-KISS(有償新株予約権)の扱いを確かめていない:取得の時期や転換の方法によって対象外になる場合があります。エンジェル税制の解説「J-KISSの扱い」をご覧ください。

8. 自分で申請するか、専門家に頼むか

東京都は、税理士などが会社に代わって申請することも受け付けています(東京都FAQ)。要件がはっきりしていて書類が揃っていれば、会社が自分で申請することもできます。要件の判断に迷う、投資家が多い、出資日が迫っているといった場合は、専門家に依頼すると準備の手戻りを減らせます。なお、申請書類の作成と提出は行政書士の業務で、当事務所では行政書士として申請をお受けします。

個別の判断は、申請日・払込日時点の要件で決まります。この記事は制度の一般的な解説です。自社が対象になるかどうかは、株主構成・事業の状況・出資の時期によって変わります。

9. よくある質問

エンジェル税制の事前確認は必須ですか?

必須ではありません。事前確認は任意の制度で、受けなくても出資後の確認申請だけでエンジェル税制を使えます。出資前に企業要件の不安を洗い出したい場合や、投資家に対象企業であることを説明したい場合に利用します(経済産業省 申請ガイドライン)。

事前確認を受けたら、出資後の確認申請は不要ですか?

不要にはなりません。事前確認は申請日時点の企業要件だけを確認するもので、投資家の要件と払込みの事実は出資後の確認申請で確認されます。投資家の確定申告に使うのは、確認申請で交付される確認書です。

事前確認にはどのくらいの期間がかかりますか?

正式な申請書類の受理から1か月程度が目安です。東京都は受領後原則1か月以内で短縮はできないとし、大阪府・神奈川県は受理後1か月程度(約1か月)としています。書類の準備や補正の期間は別にかかります。

事前確認書の有効期間はいつまでですか?

多くの場合、申請日の属する事業年度の末日までです。措置の適用期限が先に来る場合は、その日までとなります(東京都FAQ)。

有効期限が切れた後に出資を受けたらどうなりますか?

エンジェル税制が使えなくなるわけではありません。事前確認を使わず、払込後の確認申請に切り替えて手続きします(東京都FAQ)。

事前確認を受けると会社名は公表されますか?

国の制度としては、事前確認をした会社名などを経済産業省のウェブサイトで公表するとしています。運用では、東京都は交付時に公表の希望を確認し、神奈川県は企業が希望した場合に公表すると案内しています。その他の都道府県は申請先に確認してください。

事前確認の必要書類は何ですか?

申請書の様式と添付書類は、経済産業省の申請ガイドラインと様式集で定められています。登記事項証明書・株主名簿・決算書類などが中心ですが、都道府県によって扱いが違うことがあるため、申請先の案内もあわせて確認してください。

設立前の会社でも事前確認を受けられますか?

受けられません。事前確認は申請日時点で会社が企業要件を満たすかを確認する制度のため、申請日に存在しない会社は対象外です(経済産業省 申請ガイドライン)。

起業特例でも事前確認は使えますか?

起業特例の要件で優遇措置Bを使う場合は、事前確認の制度がありません(経済産業省 申請ガイドライン)。払込後の確認申請で手続きします。

事前確認を税理士・行政書士に代行してもらえますか?

代行を依頼できます。東京都は税理士などによる申請も受け付けています。申請書類の作成・提出は行政書士の業務です。当事務所では行政書士として申請をお受けしています(料金は料金ページをご覧ください)。

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  • 適用可能性診断 55,000円(税込・書面レポート+60分のご説明)※申請をご依頼の場合は全額を申請料金に充当
  • 事前確認の申請代行 220,000円〜(税込。プレシード・シード特例は275,000円〜)
  • 通常の措置(A・B)で、事前確認と続きの本確認をあわせてご依頼の場合の目安 330,000円〜(税込。設計・継続相談は含みません)
  • 出資後の確認申請(本確認)の料金は投資家1名分を含みます。投資家が2名以上の場合は、2〜5人目が1名22,000円、6人目以降が1名11,000円を追加(税込)
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※ 料金はいずれも税込です。証明書取得費・郵送費などの実費は別途で、事案の内容・難易度により報酬額は増減することがあります。受任前に見積書を提示します。
※ 本記事は2026年10月17日時点で公表されている法令・行政資料(経済産業省の申請ガイドライン〔経済産業省サイトでの案内名は「令和8年1月1日以降出資用」、PDF表紙は2025年7月1日改訂〕、各都道府県の案内)をもとにした一般的な情報です。個別の取引や申請についての助言ではありません。実際の適用は、要件の充足、都道府県の確認、税務署の判断によります。手続きの前に最新の資料をご確認いただくか、専門家にご相談ください。

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